大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和28年(オ)1203号 判決 1955年7月19日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人浜口重利の上告理由第一点について。

特別都市計画法一四条によれば、換地予定地の指定通知を受けた者は、指定された土地の上に、これを使用収益すべき本権を取得するけれども、従来の事実上の占有状態に変更のない限り、指定があつただけでは当然には占有権の変動移転を生ずるものではないこと、当裁判所の判例とするところである(昭和二五年(オ)三〇号同二七年五月六日第三小法廷判決)。されば、原判決が上告人(控訴人)において本件換地予定地を事実上占有していたことを証拠上認めることができないとして、上告人の被上告人ら(原判決(イ)の被控訴人ら)に対する請求を排斥したことは、所論のように特別都市計画法一四条の解釈を誤つたものでないこと、前記判例に徴し明らかであるから、論旨は理由がない。

同第二点について。

上告人が換地予定地の指定通知を受けただけでは第一点で説示した趣旨において指定された土地の上に占有権を取得するものでない。そして原判決は、所論のごとく上告人が被上告人らに先ち本件換地予定地に木柵を施した事実を認定したものではなく、上告人が換地予定地の一部に木柵を樹てかけたが及ばず、ついに被上告人らが移動を完了するに至つたものであつて、上告人において該土地に木柵をめぐらし立入禁止の標示をして事実上これを占有したことを認め得る証拠はないと判示しているのであるから、その認定事実と結論との間に所論のような食いちがいはない。論旨は、結局原審の事実認定を非難するに帰し、採用することができない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎 裁判官 垂水克己)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例